​Poetry

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新種の臓器

わたしはおもったことがある
皮膚が、じゃまだ、と
身体が、じゃまだ、と

一緒になりたい、と
一部になりたい、と

わたし
という臓器になって
あなたのなかに居座りたい、と

生きる意味
という役割をもつ
新種の臓器になりたい、と


という目に見える形ある臓器に
わたしはなりたい、と

マゼンタピンクの海を泳いで

恋に、落ちた
愛に、溺れた

甘くてやさしい、夢みたいで、
痛くてにげたい、悪夢みたい

落ちた、溺れた、ふたつの世界をみた

 


恋に、落ちた
愛を、泳いだ

わたあめほどに、淡くもなく、
血の色ほどに、濃くもない

落ちた、泳いだ、ひとつの世界にいた

愛くらいで

 

 

潰れるもんか
大きすぎる愛くらいで

逃げるもんか
深すぎる愛くらいで

壊れるもんか
強すぎる愛くらいで

 


潰れてしまったのは

逃げてしまったのは

壊れてしまったのは
 

愛以外にある

輪廻


ずっとそこにいても寒いでしょ
変わりたくない、なんて嘘つきだ

 

冷たくていいから
尖ってていいから
そのままどうぞ、わたしのなかに

 

あなたとわたし
違ってみえた、みえただけ

 


氷になって、ぶつかって、
水になって、溶けあって、
空気になって、みえなくなって、
懲りずにまた氷になるの


あなたとわたし
繰り返してきたね、変わらずに

 


あなたが氷でいたいなら
わたしは喜んで水になるよ


冷たくていいから
尖ってていいから
そのままどうぞ、わたしのなかに

 

魂のパズル

欠けたところ
美しい、となぞってあげる

欠けたところ
ツー、となぞって確かめる
ああ、あなただ、と

ゆびわ

好きなひとからもらう、ゆびわ

きみは、ぼくのもの
っていう、このありきたりな古い証が
すごく好き

わたしは、ものじゃないのよ
って、可愛げなく言いたくなる
そんなときもあるけど

わたしは、あなたのものよ

って、ゆびだけ

拘束されたいわたしもいる

ゆびだけなら
ゆびだけなら
ゆびだけでも

海王星のかけら

消えそうで消えない
触れそうで触れない

控えめに寄り添う
遠い惑星からの甘い夢心地

粉々にしたガラスだって
危なくないよ
きれいでしょ

ぎゅって、握りしめさえしなければ

金星と海王星のダンス

 

 

ピンクとグリーン
ペガサスとイルカ
人魚姫と人間の王子様

全然違うのに、
また会いたくなる

たった今創ったばかりの
デタラメなステップだって
正解だ、と疑いやしないよ


君となら

 

 

 

 

ちょうどいいわた

だれにも見せるつもりのない
駅のベンチにおきわすれた

開きっぱなしの日記帳のような

 

いらっしゃい、
と、いつでも受けいれられる
洒落た
着慣れたパジャマのような


どこか直視するのを躊躇われ、
ほんのすこしだけ安心され、

ちからが抜け優しく笑われる
 

そんなわたしがちょうどいいのです

 

 

 

人魚のなみだ

太陽に恋した人魚が泣いていました

恥ずかしがりやの人魚は、

どうしても太陽に振り向いてほしくて

どうしても近づきたくて

ひとつぶひとつぶのなみだを、宝石に変えました

もしもあなたが

宝石のようにキラキラした海をみつけたのなら、

それは恋した人魚が泳ぐ海

どうかそっと
鈍感な太陽に

人魚の想いを伝えてあげてください

 

 

あこがれ

 

空も木もステージに変え、踊り歌う鳥をみては、

鳥になりたい、と願った

食べて寝て遊んで怒って、また甘えてくる飼い猫をみては、

猫になりたい、と願った

散る別れと引き換えに「また来年、」と

終わらない約束ができる桜をみては、

桜になりたい、と願った

自分以外の色を知らな

もって生まれたままに生きている無垢な命は

わたしの願いなんて気にもせず

あなたになりたかったわけじゃない

だれかになりたかったわけじゃない

 

生まれたままに生きたかっただけ

わたしも

どんなあなたも大好きだよ
と、自分に、自分以外に、
いってあげられる器のおおきさが
おとなだとするのなら

幼くても、おとなはいるし
年老いても、こどもはいるし

年齢を重ねるだけで
いつのまにか成長できるのは
身体だけ

脳も心も、置いてけぼり
 


おとなになりたくなかったわけじゃない

おとなになりなさい
、といわれるのが不思議だっただけ

 

おとなのからだをもつ

こどもに

 

​おとなとこども

理由が強ければ強いほど
理由が濃ければ濃いほど
わたしは、理由を愛していたんだろう

理想という理由を追いかけて
満開のばら園で迷子になった


​自分のことしか愛せないままの
エゴイスティックな自分を見つけた
わたしは、理由を愛していたんだろう

愛は、平気で理由を越えてくるから
苦しく、尊く、唯一無二であるのだと
枯れたばら園で出会ったのでした

 

 

田舎で着るには浮いてしまうようなビビットな羽織もの

気怠さと共存する存在感のある目元は

冷たすぎても火傷するドライアイスみたい

見るからに危ない炎のほうが、よっぽど優しい

心臓に悪そうな振動で身体が火照る

液晶の奥のその瞳に吸い込まれた

あれ、いま、

すこしだけ遠い金星にでも飛ばされた、気がした

 

 


ビー玉のような大粒の涙が、

ボトボト、と、不規則なリズムで落ちていく

ひと粒おちて、音が生まれ、

ひと粒おちて、また音が生まれ、

わたしが泣き止んだ頃には、ひとつの曲が出来ていた

 

「そう。シナリオどおり」と、

落ちた痛みを掬っては星に変え、

彼女は宇宙の暗闇へと、パラパラ、と放った

 

あれはそうね、たしか、

月での出来事だった、気がした

 

「馬鹿で、痛くて、恥ずかしい人でありたいわ」

「そうすれば、それらに恐れる煩わしさはないじゃない」

「本能なんて大抵、馬鹿で、痛くて、恥ずかしいものだもの」

彼女の吐く水たばこの煙にわたしは目を閉じた

 

だって、だって、
この手を離したら
消えてしまいそうで
失ってしまいそうで
忘れてしまいそうで

壊れてしまいそうで

だから、だから、
その手を離していいのです

きっと、きっと、

最初から繋がってなどいなかった

ずっと、ずっと、

離れていても繋がっていた

いいの、いいの、

本当のものが残る

それだけだから

 

 

可能性

粘膜に守られ
静かにも、ふくよかに実る姿

蕾は色づく明日を待つだけ

豊かさと呼ばず、なんと呼べばいい
 

宇宙はわたし

わたしは世界

ずっとひとり

ずっとひとつ

みんなひとり

みんなひとつ

 

すべて

大切なものほど内にあるという
心臓も血管も、あらゆる臓器も、
傷つけられては困るから

あなたという皿の上に横たわり、

フォークに、ナイフを入れられる

きっと痛い だから恐い

教えない

教えたい

わたしの大切なもの

簡単には見えないもの

鳥の声が聴こえた
でも彼らは鳴いていた
今までもずっと
なにも変わることなく

今、やっと鳥の声が聴こえた

聴こえるまでに
わたしが変わった

水を飲んだ
身体を巡った
尿を出した
地球に還った

愛に出会った
心を巡った
お別れをした
宇宙に還った

なくなるものなんて
なにもない

受け取っていい
快く
手放していい
潔く

なくなるものなんて
なにもない

ただ巡るだけ
この地球を
この宇宙を

空き箱のコレクション

 

幸せとかかれた箱に入った物は
いつも中身は空っぽで

その幸せとかかれた空き箱を
いつまでも追いかける者の中身もまた
空っぽで

 

​今、ここ

 

しろはなだ色の風が
運んできてくれたのは、

季節の香りと、
「わたしも」という
未来からの便りと、

たとえ、わたしの中になくても
見ることも触れることもできるが、

もし、わたしの中になければ、
感じることはできない

わたしの心に美しさがなければ、
藤の美しさに触れることはできるが、

藤の美しさを感じることはできない

 

わたしの心に自由がなければ、

境界線のない自由な空を見ることはできるが、

​境界線のない自由な空を感じることはできない


感じられるものを
見たり触れたりできてこそ、
この世界を味わう、通な嗜みである

​はじめから

 

後に愛へと昇華した関係は

出会いそのものから愛であった

と、気づくもの

出会ってからのその先に

喜怒哀楽、紆余曲折、

幸せになりたい、と、半ば、嘆いたとしても

わたしはずっと、幸せだった
これからもずっと、幸せだった

愛に遭遇してしまった以上
はじめから

 

 

 

この世は二元で保たれているならば、

みなが背け捨てたがるほうを眺めていたい

 

陰極まれば陽に転じ、

陽極まれば陰に転ずるならば、

みなが嫌う陰をひたすら眺めていたい

 

陽から溢れたひとしずく

みなの代わりに眺めていたい

 

痛みと愛を引き換えに

みなが背け捨てたがる陰を

眺めていたい

 

陽に転さず、中庸へ

許しをひたすら眺めていたい

 

 

 

​パズルのピース

 

誰かが捨てた
汚れたパズルのピース
誰かが捨てた
不恰好なパズルのピース

捨てられたピースは消えることなく
集まり一つに大きくなって
わたしたちの前に現れる

  '嫌ね、最低、見苦しいわ
まったく'

自分が捨てたパズルのピース
いつまでもどこにいても
受け容れられないパズルピース

主人の元へ帰れない
愛の知らない
捨てられたパズルのピース

 

 

わたしたちが新しい世界へいくとき

痛い、苦しい、涙が出る、

でも、それでいい

命が始まるとき
命が終わるとき

恋が終わるとき
愛が始まるとき
何かが終わるとき
何かが始まるとき

 

今までとは全然違う形に変わるとき

痛いし、苦しいし、涙が出るもの

 

 

 

真面目に人生を生きていると、

蝉の声も聴こえなくなる

真剣に人生を生きていると、

蝉の声が聴こえるようになってくる


真面目に人生を生きていると、

周りの人たちの声しか聴こえなくなる

真剣に人生を生きていると、

周りの人たちの声が聴こえなくなってくる
 

 

 

​感情即演劇

不意に出逢った怪しげな音楽家
わたしには出せない音を知っている、

そんな気がした彼からは逃れられるはずもなく

彼の奏でる不可思議な音を背に、

自然と揺れる魂に身を委ねた

感情に振り回されているのではない
感情で踊っているのだ
いつだってわたしは

 

​一方通行

受け取ってもらえなかった感情が
届け先不明で、また自分の元へ帰ってきた

改めてわたしが贈ったものを丁寧に開いてみると、

「あぁ、こんなものを贈っていたのね」と、

はじめて客観的になれた気がした

いくら贈呈用にリボンがかかっていたって、

中身が、支配や依存じゃあねえ、

そりゃあねえ

嘘みたいな満月

きょう見た月は嘘みたいな月だった

あまりにも月が月らしくて

かたちを変えていく

すこしずつ

それでいて確実に

「なんにも変わらず、

ここであなただけをみてたのに」

なんていいながら

すべてが変わってしまったことすら

気づかせない月は、

まるで嘘がじょうずなあの子みたいだ

逃げてる

逃げてる

満たされる、気持ちから

ずっと

 

逃げられない

逃げられない

満たされない、気持ちから

いつも

 

いきたいね

逃げなくてもいい世界

みたいね

逃げなくてもいい世界

 

 

いいや

いいや

もういいや

やめてみた

やめてみた

逃げるのをやめてみた

満たされない、気持ちから

 

 

あーあ

 

満たされない

満たされない

 

埋まらない

埋まらない

 

足りない

足りない

 

 

穴だらけの自分が見えた

 

彼女は、走っていた

彼女は、走っていた

 

泣きながら

 

「穴をふさげられるようで、

絶対にふさげられないもの」

を、追いかけていた

 

「穴をふさげられないようで、

絶対にふさげられるもの」

から、逃げていた

 

ずっと

いつも

 

 

穴だらけの自分は、止まった

 

前でもなく

後ろでもなく

穴の空いた自分をみた

 

やっと

 

指で、するりとなぞってたしかめた

穴のふちをとるように

 

 

あーあ

 

こんなにも、

さみしい、いびつな形

さみしい、ふしぎな形

 

わたしのなかにしかない

さみしい、いとおしい形

 

 

なににもふさぎようがないのなら、

そのまま愛でるしか、

ないじゃない

じん、と

 

撫でて、抱いて、

よしよし、してあげるしか、

ないじゃない

そっ、と

 

 

あーあ

 

そうか

そうね

 

わたしのこころの鍵穴にあう鍵が

わたしがもってないわけ、

ないじゃない

どこかにあるわけ、

ないじゃない

だれかで、なにかで、

どうにかなるわけ、

ないじゃない

 

わたし以外

わたし以外

 

ただの計画

豊かさと儚さを同時に感じるのは、

この今こそ、きっと忘れられないときになるのだと

あなたが知っているからだ

奇跡も、運命も、ただの計画だ